人生100年時代の
大前提
大前提
2016年10月に書籍「LIFE SHIFT (著:リンダ・グラットン他)」が発刊されて以降、「人生100年時代の到来」は世の中に定着しつつあると感じています。
そして政府もその流れを受けて企業に雇用延長の努力義務を課すなどして対策を進める一方、企業としてはそこまで人件費を抱えきれないことから早期退職の募集に踏み切るなど、いろいろと動きが出始めているのはみなさんがご存知の通りです。
そんな昨今の世の中ではありますが「人生100年時代のキャリア戦略」を自分なりに考え、具体的な準備を始めている方はどれくらいいらっしゃいますでしょうか?
おそらくは
何かしなければと思いつつも、ついつい先延ばししている・・・
という方がほとんどではないでしょうか。
人生100年時代のキャリア戦略を考えるためには、そもそもの「大前提」を把握しないことには始まりません。
では人生100年時代のキャリア戦略を考えるうえで、知っておくべき「大前提」とは何でしょうか?
まず押さえておくべき要素は、
「人口動態」と
「社会保障」が
将来どうなるか、です。
以前のこちらの記事でも触れましたが、まずは下図のグラフをご覧ください。
これは「日本の将来推計人口」を私のほうでグラフ化したものです。
青色のほうが64歳までのいわゆる 「生産年齢人口」 で、オレンジ色のほうが65歳以上の 「年金受給世代」 です。
そして日本の年金制度は賦課制度という 「現役世代が高齢者へ仕送りする」 という方式をとっていますので、青色のグラフが 「年金のお金を払う側」 で、オレンジ色のグラフが 「年金をもらう側」 になります。
「そう考えたとき、将来はどうなってしまうのか」 というのが直観的に理解できるグラフになっています。
私は1975年生まれですが、私と同じ世代の人が現在の年金支給開始年齢である65歳になるのは2040年です。
そこから先の青とオレンジのグラフの高さをみると、とてもじゃないですけど 「現在と同じレベルの年金額は受け取れそうにない」 ということがわかります。
そしてこの問題を解決するには、実質的に方法は2つしかありません。
1つは「図のグラフの青色に該当する現役世代に今以上の多大な社会保障費の負担をお願いする」という選択、もう1つは「オレンジ色に該当する高齢世代が健康である限り65歳以降もがんばって働いて支える側に回る」という選択です。
そして既に所得の約30%(会社負担分含む)を社会保障費として負担している会社員の現状を踏まえると、現実的な選択肢は後者である「健康である限り、高齢世代が65歳以降も働いて支える側に回る」の一択しかないと私は思っています。
ではそうなったとして、今現役世代の我々は何歳まで働く必要があるのでしょうか。
「LIFE SHIFT」の著者であるリンダ・グラットン氏はじめ、その他様々なライフシフトにまつわる本で共通して語られているのは、おおむね
「80歳まで」
です。
(※)その働き方にはいろいろ選択肢があり、「週5でフルタイム」とは限りません
このように「人口動態の推移」も踏まえて考えたとき、 「人生100年時代のキャリア戦略の大前提」 として押さえておくべきことは
(健康体である限り)80歳まで働かざるをえない時代になる
ということです。
まずはこの現実から目を背けず
自分事としてその現実を直視し
そんな来るべき将来に向けて早いうちに準備していこう
という意識を持つことが
人生100年時代・ライフシフトという視点での
キャリア戦略のスタートになります。
では80歳まで働かざるをえない時代になるとして、現在、現役世代の私たちは今後80歳までどのように働いていくのでしょうか。
直近の日本政府としては、企業に70歳まで雇用する努力義務を課すことで、これまでと同様に「企業が雇用の面倒をみなさい」という姿勢で進めようとしています。
これは良い悪いは別にして、「社会保障を国が企業に丸投げする」というこれまでの路線を踏襲している形です。
ですが、さきほどの人口動態と社会保障のところで見たとおり、それは今後70歳などでは済まない話になってくるので、じわじわと法改正が繰り返され、いずれ「80歳まで企業が雇用の面倒をみなさい」という流れになっていくのではないかと思っています(実現性は一旦度外視しています)。
そして仮に、(その実現可能性は非常に低いと思っていますが)企業の体力がなんとかなったとして、「1つの会社で約60年間働く『80歳定年』時代」が実現したとしましょう。
そうなったきに終身雇用前提で働いていくとするならば、「20歳から80歳までずっと、自分の人生の手綱を会社に握られ続ける」という人生になってしまいます。
もちろんそのような人生も否定はしませんが、『自己決定』が幸福度に強い影響を与えているという2018年の神戸大学の研究結果もあるように、もしあなたが
「自分の納得のいく人生」
「死ぬ間際に後悔の少ない人生」
を目指したいのであれば、
自分の人生を会社任せにするのではなく、自分で決める
というスタンスがとても大事になってきます。
そしてこのライフシフト塾はどちらの生き方を目指すかといいますと、やはり
「自分の人生は自分が決める」
という主体的な生き方です。
具体的には、現在の65歳定年までは今の会社で雇われ続けるとしても
「それ以降80歳までの15年間は自分で稼いでいく」
というマインドと持った人生ですね(※)。
(※)これは必ずしも「独立しましょう」というわけではありません。「雇用される」という形であっても、自分の人生を会社任せにせず、自分で自分の手綱を握る生き方にシフトしましょう!という意味合いです。
そしてそのような生き方にシフトするということが、このライフシフト塾が目指していることです。
この講座は40代サラリーマンの方々を主たる対象者として作っているのですが、そんな40代サラリーマンの方々は子育て中であったり、住宅ローンを抱えている方もいたりで、安定収入の側面から今の仕事を当面は継続せざるを得ない方が多いと思います。
従って、「65歳以降は自分で稼いでいく」というキャリア形成の取り組みは、仕事以外の時間を使いながら、長期戦で取り組んでいくのが現実的です。
そのためには書籍「LIFE SHIFT」でも提唱されている
「レクリエーション(娯楽)からリ・クリエーション(再創造)へ」
という余暇時間の使い方がキモになってきます。
具体的には、
■読書などによって専門知識を高める、
■各種スクールに通うことで専門能力を磨く、
■そして実力がついてきたら副業で実践トレーニングを積む、
といったことを余暇時間を活用して行うということです。
また、副業が認められていない会社でも、収入を得なければ活動すること自体は問題ないはずですので、プロボノなどの形でどんどん活動していくことが理想です。
またこのような長期戦の取り組みは、一直線にスムーズに進んでいくものではなく、まずは小さく初めて、いろんな試行錯誤や軌道修正を重ねながら進んでいくものです。
であるならば
ライフシフトに向けた準備は
早く始めるに越したことはありません
なぜなら着手開始が1年違うだけで、その分の経験を「積みあげた自分」と「積み上げなかった自分」で大きな差が生じますし、行動している期間が長いほうがチャンスに出会う可能性も高くなるからです。
まだ若い人(30代前半くらいまで)であれば、ライフシフトを意識せずに当面の間は 「目の前のことをただ一生懸命やる」 「他者の期待にひたすら応える」 という生き方で邁進しても問題ないと思います。
なぜなら、その積み重ねによって 「できること(スキル・能力)」 が増え、その後のライフシフトの選択肢を広げてくれるからです。
ただし、一定程度の経験を積み、スキル・能力もそれなりに身についていて、一方で社内では自分の「キャリアの先」が見えてくる40代に突入したのであれば、「余暇時間」 を使ったライフシフトの準備をできるだけ早く始めたほうがいい、というのがライフシフト塾の考えです。
これまで 「ライフシフトは長期戦で」 という話をさせていただきましたが、長期戦に臨むにあたってとても大事になってくる要素があります。
それは書籍「LIFE SHIFT」でも提唱されていますが、ライフシフトという航海を進めていくうえでの「羅針盤」の役割を果たす
自分なりの確たる「人生の軸」
を定めることです。
これからの社会は情報過多の時代であり、この先どんな変化がいつ起きるかもわからないVUCAの時代でもあります。
そんな社会で「人生の軸」を持たずに生きていくと、周りに振り回されて、過度に落ち着きのない人生を送ることになってしまいます。
そのような「誰かに振り回される人生」ではなく、「自分で手綱を握る人生」を生きていくために、自分なりの「人生の軸」が大事になるということです。
では、人生100年時代のキャリアで大切になる「人生の軸」とは、具体的にどういうものなのでしょうか。
その点については、次のパートで詳しく説明したいと思います。